アルツハイマー型認知症患者の身体的症状とは

アルツハイマー認知症の場合、すぐ前の食べたものを忘れてしまう、自分が今どこにいるのか、今日は何日かわからない、といった、物忘れ、つまり記憶障害とは別に、身体的な症状も起こります。

たとえば、失語、失行、失認という症状があります。これらは見当識障害と呼ばれます。

失語
聴覚や発生機能に異常がないのに言語の理解や発声が障害されているものを失語といいます。

失行
運動障害をもたらす器質的な病変がないにもかかわらず行動が正しく行われないものをいいます。

失認
本来認識すべき対象に対して正常な意味理解ができなくなったものをいいます。

これらの症状が進行すると、歩行障害や失語状態が悪化することがあります。そして日常生活にも支障が生じます。

そのほか、めまいや頭痛といった心気症状がみられます。

道徳観や清潔感が失われ、性的に問題のある行動が見られることがあります。
また、場所をわきまえずに排尿するといった行動も生じます。夜間に幻覚をみることがあり、夜中に部屋のなかを歩き回ったり、大声をあげて、家族の生活にも大きな影響を及ぼすことがあります。

身体的な症状としては、神経系以外の異常や変化は起こらないのが普通なのですが、歩行困難や失禁などの神経系の変化から異常が起こることはあり、症状が進むと寝たきりになってしまいます。末期は完全な認知症状態にいたり、ふつう発病から5〜10年で死にいたるといわれます。

アルツハイマー型認知症患者の生活上のアドバイス

人は、誰でも歳をとると、多少は記憶力が衰えることはあるものです。しかし、それが生活に支障をきたすようになると問題となります。

老人期の認知症として問題になるのは、次の4つです:

アルツハイマー認知症
クロイツフェルト・ヤコブ病
●ピック病
コルサコフ症候群

これらの認知症症状が生じた場合、その進行を止めることは無理でも、生活への支障を最小限にとどめるための幾つかの生活上のアドバイスがあります。また、これらの症状の発生を予防するためのアドバイスとしても参考になると思います。

認知症の直接的な原因は、現在のところはっきりしていませんが、からだの病気や環境の変化などをきっかけとして生じることが多いといわれます。
会社を定年したり、入院をしたりして、それまでと生活が急に変化したりすると、認知症になりやすくなります。

したがって、普段から自分の健康に留意することが重要なことはもちろん、仕事以外にも趣味や人間関係を広げるなど、生きがいをもつことが大切です。
またそのような環境を整備しておくことも必要でしょう。
これには本人はもちろんのこと、家族や地域社会全体の理解と協力が必要です。

認知症の症状のある老人を抱える家族は、看護の大変な負担を負うことになりますが、家族の看護のよしあしがご本人の予後に大きく関係してくることから、できるだけのことはして差し上げたいものです。

医療機関や地域の支援を最大限に利用して、家族が共倒れにならないようにリハビリをしていくことが大切です。

アルツハイマー型認知症の薬が開発されています

アルツハイマー認知症の場合、原因が解明されていないことから、その症状を改善することは困難です。
しかし、数年前から脳の循環や代謝を改善する薬が多数開発され、多くの患者さん方に対して使われるようになってきました。

これらの薬は確実な成果をあげつつあります。
しかし、認知症の中核症状である知能の低下に対して薬は作用するわけではなく、認知症にともなう譫妄や暴力といった精神症状および行動異常に対して効果的に作用するにすぎません。これらは周辺症状といいます。

認知症にともなう知能低下を改善する薬は、現在のところ開発されていません。
知能低下に対する治療には、脳の神経細胞の再生を促進し、失われた脳の機能を蘇らせる薬を使用することが必要です。
または神経と神経の間の情報連絡を活発にして、脳の働きを活性化するような薬が必要なのです。

最近期待が寄せられている研究は、神経細胞が分裂、増殖するのに必要な因子に関するものです。
これを神経成長因子といいます。

これが認知症の治療に有効ではないかと考えられるのです。
脳の細胞は本来、増殖することはありません。
一度死滅すると、二度と再生できないと考えられています。

しかしダメージを受けてはいるもののまだ死滅するにはいたっていない神経細胞が回復するのに神経成長因子が有効ではないかと考えられるのです。
この研究は、まだ動物実験段階ですが、改善効果があったという報告があります。